ラーマとラクシュマナの二人が急いで庵に戻ったときには、もうそこにシーターの姿はありませんでした。二人はシーターを捜しまわりました。ラーマは涙を流しながら、愛するシーターを見なかったかと鳥や動物や木々や草花にたずね回りさえしました。喜びも苦しみも完全に超越しているラーマの内面に、主ラーマと離ればなれになって悲しんでいるシーターの痛みが映し出され、ラーマは涙を流したのでした。帰依者の呼びかけが神の内に映し出されるように、ラーマの涙は、シーターの悲しみを映し出していたのです。
懸命に捜しまわっていると、一羽の年老いた鳥がひどい傷を負っているのを見つけました。その鷲は鳥族の王ジャターユでした。ジャターユは自分がダシャラタ王の友人であることを名乗り、高い木の上からシーターを見守っていたと告げました。シーターが誘拐されるのを見たジャターユは、空中の魔王ラーヴァナに勇敢に立ち向かいました。「人妻を奪うような淫らなことをしてはならない。それは狂った欲望だ。あとで自分を苦しめることになるぞ」と叫びました。そして自分の危険を顧みず、言いました。「ラーヴァナよ、おまえは自分で不幸の種をまいているのだ。必ず後悔する時が来る!」シーターを守るためにジャターユは必死でした。しかしその瞬間、ラーヴァナに斧で両翼を切り落とされてしまいました。息絶え絶えに地上に落ちて苦しんでいたとき、ラーマとラクシュマナの二人がやって来てジャターユを介抱してくれました。致命的な傷を負ったジャターユは、シーターがさらわれたときの様子をラーマに話しました。ラーマは、ジャターユがシーターのために命を犠牲にしてくれたことに深く感謝し、自分のひざにジャターユの頭を乗せて、のどに冷たい水を注ぎました。ラーマの手から注がれる水を飲み、自分の額を撫でてくれるラーマの優しい手のぬくもりを感じて、ジャターユは幸せでした。
ジャターユはラーマの御名を繰り返し唱え、「ラーマ!」と言って静かに息を引き取りました。ジャターユの見返りを求めない犠牲的愛は、神の恩寵を受ける特権を得て、その魂は神の光に導かれ、天上界へと昇って、万物の親である神の元へと帰っていきました。
死の床で、神を想いながら神の名を呼んで亡くなることは、最高に幸せな最後だと言われています。しかし、誰もがそのようにできるわけではありません。神への深い信愛がなければ、死の間際に神の名を呼ぶことは、ほぼ不可能です。