22.ランカー国へと通じる橋の建設

ランカー島が見渡せる海岸付近まで来ると、ラーマと猿王スグリーヴァはランカー島まで届く橋の建設について相談をはじめました。するとそこにラーヴァナの弟ヴィビーシャナが近づいてきて、橋の建設を手伝わせてほしいと申し出たのです。

弟ヴィビーシャナはランカー国で暮らしていたとき、兄ラーヴァナの非道な振る舞いや、色欲のままに乱れ遊ぶ兄の行為をいさめました。兄ラーヴァナはランカー国を拠点にすべての悪魔を支配し、傲慢な命令を出し、地上でも天上でもさまざまな騒動を引き起こしていました。その心は邪まで、思いのままに権力を振るうことが好きでした。そんな兄をとがめ、改めさせようとしましたが、逆に裏切り者の汚名をきせられてしまったのです。ラーヴァナとその息子インドラジットはおまえは反逆者だと怒り狂い、王国を去れと弟のヴィビーシャナに命じたのです。ヴィビーシャナはランカー国の安寧を祈り、王国を出ました。ランカー国を追放された弟ヴィビーシャナは善良な性格で、神への深い信仰があり、兄ラーヴァナとは正反対の性格でした。ラーヴァナは苦行によって大きな幻術を手に入れましたが、その力を誤用し、社会のために役立てようとはしませんでした。一方、弟のヴィビーシャナは自分が偉大になることよりも、善良であるよう努力する人でした。

人は自分が積んだカルマの報いとして、同じ母から生まれた子供であっても正反対の性格、まったく異なった経歴をたどることがあるのです。今日、親族間での争いが多くみられるようになりました。エゴこそがあらゆるトラブルの根本原因です。

ラーマは、橋の建設にヴィビーシャナの力を借りることにしました。ヴィビーシャナは常にラーマを憶念し、ラーマの御名を唱え、ラーマの御姿を瞑想してきました。そして今ようやく橋の建設をとおして神の化身ラーマに奉仕する機会に恵まれたことを、心から感謝しました。神への奉仕によって、自分の人生を聖化したいと思っていたからです。

直接神に奉仕することだけが、神への奉仕ではありません。日常において、自分がおこなうすべての行為を神に捧げる思いをもってなすことは、神への奉仕となります。そしてまた人に奉仕するとき、その人のなかに住んでいる神に届くように真心をこめて誠実に行うことも、神への奉仕です。人への奉仕は、神への奉仕なのです。このようになされる神への奉仕は、非常に価値のある行為です。

ラーマは海に橋を架けるために、海岸に座ったまま三昼夜、祈り瞑想しました。でも海の大王は言うことを聞こうとせず、大波を立ててますます荒れ狂ったのです。ラーマが謙虚に振る舞うと、海の大王はそれを手玉に取っておごり高ぶったので、ラーマは「怒り」に湧きおこるように命じて、大弓に矢をつがえて引き絞り、憤怒の形相で立ち上がりました。そしてこう言いました。「わたしは自然の摂理にしたがって慎ましく辛抱強くあろうと謙虚に振るまった。しかしそれを、わたしに力がないと考えて、おまえは大波を立て続けた。この天上の矢一本で海水をすべて干上がらせ、おまえの中で生きるすべての生き物を滅ぼすことができるのだ。おもえは大波を立てつづけるのか、それともいうことを聞いて波を静めるのか!」すると海の大王は波を静めていうことを聞いたのです。ラーマは忍耐することと赦すことが至高の形で人格化した神の化身ですが、強情で行き過ぎたエゴに対していざ怒りをあらわすとなると、「怒り」に湧き起こるよう命じて、あえて憤怒の形相を見せるのです。ラーマは至高神そのもので、あらゆる創造物の主なので、すぐに思いのままに事をなすことができたのですが、主ラーマは謙虚さという手本を示すために、海に対して額ずき祈るといった行動をとったのでした。しかし非常に傲慢なエゴに対しては、あえて「怒り」に湧きおこるよう命じて、憤怒の形相をとることもあるのです。

ラーマの「怒り」の形相を見て、海の大王は姿をあらわし、こう言いました。「万物で永遠のものはないが、ラーマの御名だけは別である。岩にラーマという御名を書いて海に投げ込むといい。ただし、一つの岩に「ラー」と書き、もう一つの岩に「マ」と書いて海に投げ込むことだ。そうすれば互いに引き寄せあって橋ができるだろう」

ヴィシュヌ神をあらわす「ラー」と、シヴァ神をあらわす「マ」が、神聖な神の御名「ラーマ」なのです。天上界において、至高神は「ラーマ」と呼ばれて神々から崇められているのです。

橋の建設に携わるものたち全員が、神の化身ラーマを憶念しながら岩を拾い集め、ラーマの御名を書き、「ジェイ ラーマ!(ラーマに栄光あれ)」と讃えながらたくさんの岩を海に放り込みました。橋は四日で完成しました。ラーマの御名が刻まれたたくさんの岩が引き寄せあって海に浮き、ランカー島まで続く長い橋が築かれたのです。

その頃、魔王ラーヴァナは部下の黒魔術師に命じて、ラーマそっくりの生首を作らせていました。シーターを思いのままにし、ラーマの面目をつぶしたかったからです。シーターの目の前にその首を置き、「シーターよ、これがラーマのなれのはてだ。ラーマは死んだのだ」と言って、ラーヴァナは自分の絶対なる権力をみせつけました。「ラーヴァナよ、そなたの卑怯なやりかたは、いずれそなたを破滅へと導くでしょう」シーターはそう言うと、気を失ってしまいました。そのとき使者が緊急の用事を伝えにきたため、ラーヴァナはその場を立ち去りました。ヴィビーシャナの妻サラマーはシーターを介抱しながら、こうささやきました。「シーターさま、ラーマさまを殺すことができる者などこの世に誰もおりません。ラーヴァナのまわりには、人をあざむく魔術師が幾人もおります。ラーマさまの首は本物ではありません。これはただの作り物です。ラーマさまはご無事であられると思います」シーターとサラマーは平和がおとずれることを祈って、ラーマの御名を唱え、瞑想しました。

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